07/14(木曜日)

社会保障・税一体改革 各論(1):医療・介護分野の改革

 

前回のこのコーナーでは、この社会保障・税一体改革の背景と改革案の全体像のポイントを御紹介させていただきました。

 

今回は、この成案に盛り込まれた医療・介護分野についての改革案を御紹介したいと思います。

 

日常に必要な医療・介護は日常の生活圏で

 

まず、医療・介護サービスの現状について、皆さんはどのようにお考えでしょうか?

 

例えば、救急車を呼んだのになかなか搬送先が決まらなかったとか、高齢の方を自宅で介護しようと思っても、家族だけでは、なかなか続けていくことが難しく、支援してくれるところが必要だ、といった話を聞かれることがあるかもしれません。

 

こうした現状を改善するため、「日常生活に必要な医療・介護は日常の生活圏で」との考え方で、おおむね1つの小学校や中学校が所在する地域ごとで、日常に必要な医療・介護サービスが継続して提供される体制を構築することを、今回の改革案の柱としています。

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図1:地域包括ケア(イメージ図)

 

これにより、万が一の時には、すぐに適切な病院で診療を受けることができ、また、家族で在宅介護を行う場合に、ヘルパー等の必要な支援を円滑に受けることができるようになります。

 

病院の役割分担と機能の強化

 

また、病院での医療サービスは、患者の方々の状態に、より適したものでなければなりません。

 

例えば、交通事故などによる大けがや脳卒中などの病気で緊急の治療が必要な患者の方に対しては、医師や看護師が中心となって、様々な設備の整った病院で手術などを集中的に行うことが必要です。

 

一方で、大けがや病気からある程度回復して、日常生活に復帰するためのリハビリを行う患者の方々には、リハビリを手伝う理学療法士といった方々によるケアが必要となる場合もありますし、慢性期の病気の方に対しては、治療よりも日常の生活のケアが必要な場合もあります。

 

このため、今回の改革案では、病院の役割分担をより明確にし、患者の方々がそれぞれの状態に応じて適切なサービスを受けられるような体制を構築することも目的としています。

 

「施設」から「地域」へ、「医療」から「介護」へ

 

日本では、諸外国と比較して、病院のベッド数が多い一方で、ベッド当たりの医師や看護師等の職員数が少なく、平均の入院日数が長くなっている、といった課題があると言われています。

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図2:急性期医療の平均在院日数(1995-2008)

 

こうしたことから、病院の役割分担の明確化を進め、救急医療などの分野に資源を集中的に投入しつつ、リハビリや慢性期医療も強化しながら、在宅医療の充実を進めることで、患者の方々の状態が回復し、できるだけ早く退院をして住み慣れた地域で日常生活に復帰していける体制づくりを進めていくことが重要です。

 

そのため、今回の改革案では、『「施設」から「地域」へ、「医療」から「介護」へ』との考え方の下に、医療機関や介護サービスなどの適切な連携により、患者の方々に対して入院からリハビリ、地域での介護などといった切れ目のないサービスを提供する体制(地域包括ケア)を整備していくこととしています。

 

安心して生活できる社会を支える保険制度の強化

 

日本では、医療や介護を利用する場合には、国民の皆様がいずれかの保険制度に加入いただき、その費用の一部を負担するだけでその他の費用は保険料や税金で賄う制度を採用しています。

 

この保険制度についても、以下のような問題点が指摘されています。

・ 最近、サラリーマンを対象とする医療保険(被用者保険)に加入できないパートなどの非正規雇用の方々が増加していること(図3)。

・ がん治療などの先進的な医療の発達によって個人の方の医療費負担が増大していること(図4)。

・ 高齢者の医療費を、社会全体で支え合う仕組みの中で、現役世代の方々の負担が増大していること(図5)。

・ 収入が少ないことにより保険料を負担できない方々が増加しており(図4)、保険制度の財政運営も悪化していること。

・ 介護サービスの利用の増大に伴い、介護保険の保険料負担が増大していること(図6)。

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図3:非正規労働者の増加

 

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図4:国民健康保険の現状(医療費負担の増大、滞納世帯の増加)

 

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図5:高齢者医療の現状(増大する現役世代の負担)

 

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図6:65歳以上が支払う介護保険料〔全国平均(月額・加重平均)〕

 

こうしたことから、今回の改革案では、被用者保険の対象者の拡大や、高額な医療を受けた場合の負担の軽減、高齢者医療制度の見直し、医療保険の財政基盤の強化、費用負担能力に応じた介護保険の負担の見直しといった施策に取り組むこととしています。

 

医療・介護制度の効率的な運営

 

言うまでもなく、現在、国や保険者の財政は大変厳しい状況です。医療・介護の保険制度は国民の皆様からの保険料や税金によって賄われているものですから、できる限り効率的に運営をして、今後の国民負担の増加をできる限り抑えていかなければなりません。

 

こうした観点から、生活習慣病の予防やリハビリなどの介護・重度化予防に積極的に取り組むことにより、国民の皆様の健康を維持し、結果として必要となる医療・介護の費用を抑えることも重要な取組です。

 

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図7:市町村の予防事業の効果の例

 

このような予防事業の他にも、ICT(情報通信技術)の活用による業務の効率化や、特に必要もなく多くの病院を受診したり、飲み残してしまうぐらい多量の薬を処方してもらったり、といったことを無くして、患者の方々が必要な時に適切に病院を利用していただくことも重要です。

 

こうした取組により、保険制度の健全な運営を確保していくことも重要な改革の柱となっています。

 



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