07/27(水曜日)

社会保障・税一体改革 各論(2):年金制度改革

 

社会保障・税一体改革の成案に盛り込まれた個別制度の改革の内容をご紹介するシリーズ。今回は、年金制度の改革です。

 

年金制度の安心を高める!

「国民皆年金」の実現から、半世紀あまり。公的な年金制度は、皆さまの老後の生活を支えていくために、今や欠かせない存在となっています。65才以上の高齢者世帯について見ると、その収入全体の7割を年金が占め、また、年金のみの収入に頼って生活している世帯が6割となっています。

「高度成長期に築かれた我が国の社会保障制度が時代の要請に合わなくなってきている」という問題意識を7月11日の記事で述べました。年金制度についても、社会の変化に合わせて、国民の皆さま一人ひとりにとって安心できるものにしていく、ということが今回の改革の眼目です。

具体的には、

●高齢者の方々の最低限の生活を保障できる制度とすること(単身者や低所得の高齢者の増加に対応)
●国民の皆さまから信頼され、財政的にも安定した制度とすること
●新しい仕事への挑戦や女性の就労を妨げない制度とすること
という3点の実現を目指すものになっています。

 

「新しい年金制度」に向けて
今回の成案では、上記のような方向性に沿った「新しい年金制度」の骨格を示し、今後、国民的な議論を進めていくことが盛り込まれています。

具体的には、以下のような方向性が示されています。

●自営業者もサラリーマンも同じ制度に加入し、「所得が同じなら同じ保険料、同じ給付」となるようにする《所得比例年金》
●「高齢期に最低限これだけは受給できる」という具体額を明確にする《最低保障年金》

 

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「『あるべき社会保障』の実現に向けて(民主党「社会保障と税の抜本改革調査会」)」より
図1:新たな年金制度のイメージ

 

現在の年金制度をこのような「新しい年金制度」に抜本的に改めるためには、国民の皆さまの幅広い合意が必要であることはもちろんですが、新しい制度づくりそれ自体も、決して簡単な作業ではありません。

例えば、自営業者とサラリーマンが同じ制度に入るためには、現在検討を進めている「社会保障・税に関わる番号制度」の導入・定着や、税と社会保険料を一体的に徴収する体制の構築も必要となり、こうした環境の整備には一定の準備期間が必要です。

こうした点も考慮し、今回の改正案のうち「新しい年金制度」については、その骨格を示すだけにとどめ、国民的な合意に向けた議論や環境整備を進めた上で、具体化を進めていくことが想定されています。

 

現行制度の改善
新しい年金制度の創設に向けた議論や環境整備と並行して、今回の成案では、改革の方向性に沿って、現行制度を改善することも盛り込まれています。今後さらに具体的な検討を重ね、来年以降速やかに法案を国会に提出し、順次実施していくこととしています。具体的対応の主な例は、以下のとおりです。

 

(1)非正規労働者の方々への厚生年金の適用拡大
年金制度を「働き方」に中立的な制度とし、各人の実質的な労働内容にふさわしい年金保障を受けられるようにするため、パートなど短時間労働者の方々も新たに厚生年金の適用対象とすることとしています。

現状では、正規労働と勤務内容は同じなのに、雇用契約の形態が違うというだけで、社会保険の枠組から排除されるということが生じています。このことが、社会全体の格差を増幅させ、将来の生活不安から結婚に踏み切れない未婚者を増やし、少子化の一因になっている、との指摘もあります。

社会全体で助け合う仕組みであるはずの社会保険制度がこうした問題を助長することがあってはならない- そうした問題意識に基づき、この問題は、菅総理からの指示(※)により、社会保障改革の最優先項目の一つに掲げられました。

(※)社会保障改革における「安心3本柱」について(平成23年5月23日総理指示)

 

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図2:非正規労働者への厚生年金適用拡大のイメージ

 

(2)年金の最低保障機能の強化
年金を受けていない、あるいは低額の年金にとどまる高齢者がおられることに対応し、低所得の高齢者の方々の年金受給額を増額するほか、年金を受給するために必要な期間(現行は25年)を短縮する、といった措置を検討しています。
なお、それに併せて、高所得の年金受給者の方々については、その年金額のうち、税金で賄われている部分の減額をお願いすることも提案しています。

(3)サラリーマンを対象とする年金制度の一元化
民間企業で働く方、公務員や教員などの職業毎に分かれている「被用者年金」を一元化し、保険料の水準や給付内容を統一していくこととしています。

(4)経済情勢に応じた給付額の調整(マクロ経済スライド)
年金制度では、若い世代が保険料を納め、高齢者が年金を受給しています。そのため、制度の長期的な安定を図るためには、将来まで見すえた我が国全体の人口構造の変化を踏まえて、「負担」と「給付」のバランスを取らならければなりません。例えば、保険料を支払う現役世代の賃金が下がったり、受給者の平均余命が長くなったりすれば、受給額を引き下げる調整が必要となります。
平成16年の制度改正により、経済情勢に応じて年金給付額を調整する仕組み(マクロ経済スライド)が導入されていますが、物価や賃金が下がる状況では、こうした給付の引下げがなされない制度となっています。制度の持続性と世代間の公平を確保する観点からは、こうした給付額調整の仕組みのあり方について、検討が必要です。(もちろん、賃金低下を招くような経済情勢を好転させ、デフレを脱却することが最重要であることは当然です。)

(5)年金の支給開始年齢の引き上げ
厚生年金の支給開始年齢は、現在、2025年までかけて、65歳に引き上げられることとなっています(女性は5年遅れ)が、諸外国を見ると、アメリカ、ドイツは67歳まで、イギリスは68歳まで、将来的に引き上げることを既に決めています。
我が国は世界最高水準の長寿国ですので、これらを参考に、高齢者の雇用の確保を図りながら、68~70歳へのさらなる引き上げを視野に、検討していくこととしています。

 

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図3:日本と諸外国の支給開始年齢

 

年金制度については、まだまだ様々な論点があります。また、記録問題への対応など、業務運営に関する諸問題も多く残されています。ここでご紹介した課題以外の問題も含め、国民の皆さまにとって安心でき、信頼できる制度となるよう、成案を基に、国民的な議論を深めていくことが求められています。

次回のこのシリーズでは、子ども・子育て分野について、詳述したいと思います。

 



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